グレープフルーツからナガサキアゲハ(6回生 香川弘昭)( 2017.7.09 )

和気先生を偲ぶ会が発展して「カエルの会」となり、昨年の琴平山に続いて、第 2 回は大川山だった。 7 月 8 日の母校、丸亀、大手前校でのホームカミングデーと善通寺、木徳のお墓参りは、参加出来なかった。 岡山の清心女子大学で、姜尚中氏の講演『現代人の心の癒しー「漱石のことば」をめぐって』が午後 3 時ま であり、JR 岡山駅から乗り換えを繰り返して、5時までに琴平での懇親会に駈けつけた。岡山から四国の 琴平までわずか 64 km だが、数回の乗り換えが必要で、毎回、時刻表を眺め、費用と時間を考えて選択す る。乗客のみならず、乗務員も岡山から児島までは JR 西日本、瀬戸大橋から JR 四国の担当になり、各駅 停車、快速、特急便まで全て同じ様式で運営している。列車の速度は格段に速くなっているが、運営様式 は 60 年前と変わらない、昆虫少年の蝶や花に対する気持ちと同じなのだろう。

大手前での生物部から、岡山大学で山岳部に入り、名古屋大学院からは生物物理学が専門となってバク テリアを扱っていたが、岡山大学に戻り、渡英後は研究対象が線虫に変わった。所属学会の一つの分子生 物学会では“蟲好き”が多く、知遇も広がった。彼らの情熱は半端でなく、到底かなわないと思いつつ、わず かな心がけでムシへの興味を持ち続けている。ムシと食僧の関係も面白い。

カエル会の前日、ドロンコになった乗馬靴を洗っていると、ナガサキアゲハが飛び立った。以前から気づ いていた壁の蛹は空になっていた。日頃の癖は、種をまいて芽立ちを楽しむ。特に柑橘類は朝食後の胃酸 過多を中和する為に必須である。夏みかん、金柑、グレープフルーツ は特に種が多い。温州みかんは接ぎ木で、種が有ると商品価値が下 がる。ともあれ、種は世界を旅しても持ち帰って何処かに埋める。玄関 横には実生の種から育った木が屋根を越えるくらいに育っている。あま り伸びたので、昨年剪定していると、鳥の巣が見つかり、そのままに残 してある。ナミアゲハが産卵して、卵から孵化した黒いムシから、緑色 になり、さわると黄色の角を出す。そして木から離れた所で蛹になる。 図鑑を調べると、ナガサキアゲハのメスで、雄は黒一色だ。家の前を、通過するモンキアゲハには気づい ていたが、クロアゲハにしては大型だったのはナガサキアゲハのオスだったのだ。羽化直後の無傷の蝶に 思わず、右手の親指と人差し指に力を入れ、蝶の行く末などを考えている間に、蝶は空に舞い上った。

妻のお供でカナダのアンの舞台「グリーン ゲーブルズ」を訪れた。ツ クバネソウ、ワスルナ草にユリ科のハナも「恋人の小径」に咲き誇ってい た。奈良を始め「万葉植物園」があちこちにつくられている。自然に親し む人の心は古来変わらない。便利な世の中だが、自然に親しむ心を次 代に伝えたい気持ちは日々に増す。

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